bubble cotton book

まき貝の自分のための読書記録です。

Entries

2017年(8)モンスターマザー 長野丸子実業「いじめ自殺事件」教師たちの闘い(福田ますみ)

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

モンスターマザー [ 福田ますみ ]
価格:1512円(税込、送料無料) (2017/4/1時点)




本書は、2005年12月に長野の丸子実業高校の1年生がいじめが原因で自殺したという事件から、裁判の判決が出るまでを、丹念に追ったノンフィクションである。

丸子実業高校の1年生男子の自殺の原因が、同じ部活の同級生のいじめによるものだとの母親の訴えから、いじめ自殺事件として、マスコミにも大きく取り上げられた。
しかし、母親の言うことと、事実は大きく違っていて、いじめなどはなく、むしろ母親による虐待とも言えるレベルの息子への対応が問題であった。

しかし、母親の訴えにより、有名な弁護士も母親の側につき、裁判になる。
訴えられた、学校や生徒、家族は、それまでさんざん、いじめという言いがかりを元に、母親から罵詈雑言を受け、精神的に参っていた。
このままでは、真実は埋もれてしまうと危惧し、逆に母親に対し、名誉棄損などで訴えを起こす。
双方お互いに訴えあうという、泥沼の展開になったが、7年近くの年月をかけ、いじめはなかったという判決が下され、なおかつ、母親に、先生や保護者たちに、損害賠償を支払うように言い渡される。
母親の敗訴である。

だが、判決が出る時までには、7年の年月がかかり、周囲のイメージはいじめによる自殺と言うものであり、何の責任もない同級生たちは、いじめの加害者として見られ続けていた。
判決が出た時には、事件は風化し、すっかり忘れ去られている。
そして、丸子実業高校は、いじめ自殺があったという、印象だけが残っているかもしれない。

この本の題名のモンスターマザー。
最近よく言われるモンスターペアレンツの母親版のことである。

ここ最近、ニュースでも言われているが、無かったことを証明することは、悪魔の証明であると。
無かったことでも、あったと訴えられたら、無いことをどう証明すればいいのだろう。

ごね得と言うものが昔からあるが、訴えたもの勝ちの世の中には、したくないものである。
ただ、誠実にやっていることは、時間がかかっても、周りは必ず見ていてくれるということが、証明されたのは、救いである。

2017(6)(7)神の子(薬丸 岳)

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

神の子(上) [ 薬丸岳 ]
価格:950円(税込、送料無料) (2017/2/14時点)




主人公は町田博史でIQが160近くと極めて高いが、薬中の母親に動物のように育てられ、戸籍もなく学校にも行かずに育つ。
その町田を中心に、生きるために振り込め詐欺グループに所属するも、親友のために少年院に入って、そこで知り合った、少年たちと縁することになる。

少年院を出たあとは、監察官の内藤の世話で、鉄工所の母子や、大学に通うようになると、大学の仲間など、町田本人の意思とは関係なく、人とのつながりで、会社を興こし、成功へと導く。
すべてが上手く行くかと思えた時、次から次へと、災厄がもたらされる。
その背後には、ムロイという、悪の組織の力が糸を引いていた。

その一方、雨宮一馬という、やはり親に捨てられた、ひどい環境で育った少年が、ある組織のトップに認められたいがために、人を殺したり、ホームレスになって人探しをしたりする様子も描かれる。

多くの人の目線で話があちこちにいくので、どうかかわっていくのか、わからなかったが、最後にはまとまっていく。
ハードボイルドな話なので、バッドエンドなのかと覚悟していたが、思いのほか読後感は良かったし、ひどい育ち方をしても、人はいくらでも良い人と、良い縁を結んでいけば、変わっていけるのではないか、という希望が感じられた。

上巻462p下巻458pとけっこうなボリュームがあるが、飽きさせることがなく、読み進める。

強いて言うなら、雨宮一馬が心酔した、ムロイという悪の組織が、描き足りないような気もした。
奥の深い謎の多いキャラのようなので、ムロイを主人公に本が1冊書けるように思った。(あるいはあるのか?)

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

神の子(下) [ 薬丸岳 ]
価格:950円(税込、送料無料) (2017/2/14時点)


2017(5)泣き童子 三島屋変調百物語 参之続(宮部みゆき)

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

泣き童子 [ 宮部みゆき ]
価格:820円(税込、送料無料) (2017/2/14時点)




三島屋変調百物語の3巻。
いろいろな不思議話を作り出すものだと感心します。
読むのも、いろいろな不思議話がだいぶ混乱してきました。(笑)
「魂取の池」
その池に夫婦や恋人たちが近づくと、必ず男に新しい女が出来て、別れてしまう。
恋人との仲を試して、別れることになってしまい、好きでもない男と結婚した女は、その男と別れるためにもう一度池に行くが、男に女は出来ず、財産を失ってしまう。
お金と結婚したからだった。
何もかも失くした夫婦は、結局二人で頑張っていくうちに、仲良し夫婦となったとさ。

「くりから御殿」 山津波で家族友達を亡くし、一人生き残って長生きした男の心に巣くった不思議なお話。

「泣き童子」 やせ衰え行倒れの状態の老人が、罪人がそばにいると、泣くのが止まらなくなる子供の話を語る。
ひどいような、悲しいような、辛いお話。

「小雪舞う日の怪談語り」怪談を語る会に参加し、さらにお話がいくつか話される。

「まぐる笛」若侍が語る山奥の村に出た、人を食らう獣・まぐるの話。

「節気顔」夫を亡くした小間物屋の女房が語る、自分の伯父の話。飲む打つ買うの遊び人だった伯父が改心して帰ってくるが、節季の日には、死者の誰かの顔に代わり、身代わりとなって、死者の縁者に会いに行くという話。

たくさんの話を読んでいると、どれがどれだか記憶できないのだが、多くの話には、若干の教訓や、戒め、人生の有りようが描かれていると思う。
なかには悲惨な話もあるのだけれど、怖いがゆえに人を殺めてはいけないという教訓である。
最近は、怪談話は流行っていないが、こういう怖さというものが、人の道から外れまいとするストッパーとなるように思う。

2017年(4)あんじゅう・三島屋変調百物語事続(宮部みゆき)

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

あんじゅう [ 宮部みゆき ]
価格:884円(税込、送料無料) (2017/1/13時点)




「おそろし・三島屋変調百物語 事始」の続編。

第一話 逃げ水 
田舎から丁稚としてやってきた小僧平太がいると近くの水が枯れてしまうという不思議なお話。
その平太に憑りついて一緒にやってきた白子様は、大水を抑えてくれる神様だった。
三島屋の丁稚の信太と平太は仲良くなって、この本では、信太も活躍することとなる。  
         
第二話 藪から千本 
三島屋のお隣のお店の娘さんが嫁入りしたが、その時に影武者のようにしていた女性は、疱瘡にかかりあばたのひどい人だった。
そんな影武者を立てなくてはいけなかったわけは、、双子を嫌った姑と嫁たちとの確執と因縁があったからだった。
兄弟夫婦と双子の娘をめぐる、人の業のちょっと悲しいようなお話。
この話の疱瘡痕のある女性・お勝は、主人公のおちかの手伝いを兼ねて、三島屋の女中として働くようになる。

第三話 暗獣 
三島屋の丁稚の信太が手習いに通っていて、手習いの友達・直太郎に殴られて帰ってくる。
その直太郎は、死んだ父親が付け火の疑いを受けたために、母親から引き離されて、養子に出されていた。
本当の火事の理由をおちか達が調べると、その燃えた屋敷には、直太郎の手習いの大先生が昔住んでいた屋敷で、暗獣と名付けた、不思議な獣が住んでいたという。
ここでは、直太郎の友達の子供3人組と、手習いの若先生・青野利一郎が登場し、これ以降、活躍してくれる。

第四話 吠える仏
直太郎と仲間の子供たちの御守りをしたり、また青野の若先生の知人でもある、行然坊という偽坊主が、三島屋にやって来て、自分の若い頃の不思議な体験を語る。
ある山奥の村は、他の町や村から隔絶していて、表向きは貧しいということにしていたが、本当はお寺の和尚を中心に、豊かに暮らしていた。
だが、村人に一人が、さらに大きく儲けようとしたために、その男家族を古い昔の仕来りと称して、男と家族を山奥に閉じ込めてしまう。
その結果、妻と赤子が死んでしまったため、男は復讐の鬼となってしまった。
この世に仏はいるのか?それを問いかけるようなお話だった。

百物語は怖い話である。
変調 百物語なので、いわゆる幽霊話ではないのだが、人間の業ゆえに怖い話が出てくる。
日常の、人の営みの中に怖い話はあるのだと思う。
むしろ、怪談というか、不思議な話の方がほっこりするような話になっている。
表題のあんじゅうは、暗獣と書くのだが、ひらがなの題名を見た印象、まんじゅう?と思うような、全然怖くない印象そのままの、心温まるような、別れが悲しくなるような、せつないお話であった。

化け物との交流の方が、人間同士の世知辛い付き合いより、よっぽど心と心が触れ合えるのだったりする。
そうは言っても、人間同士、悪いことばかりでもなく、やっぱり人は人の間で生きるから、人間なんだなと思わせてもくれるあたり、さすが、宮部みゆきと思った。

2017年(2)(3)星籠の海 上・下(島田荘司)

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

送料無料/星籠の海 上/島田荘司
価格:950円(税込、送料別) (2017/1/9時点)




全然知らなかったが、2016年に映画化されていたらしい。(笑)

御手洗潔シリーズで、語り手の石岡の一人称で進むが、章ごとに別の人達の視点でもエピソードが登場。
そのエピソードが若干長すぎる感じがしないでもない。
喫茶店に勤める小坂井の高校時代から恋人を亡くすまでの長いエピソードは、もう少し短くてもいいように思う。
確かに、恋人の「呪ってやる」という呪詛があるゆえに、宗教にはまり、その呪いで新しい恋人が思ってもみない事故を起こしてしまうという伏線になるのかもしれないが。
人の人生への見方考え方を思うに、自尊心プライドが高すぎると、自己中心的になってしまう、とう教訓にはなると思う。
にしても、なんて身勝手な女なんだと、読んでいて腹立たしかったりした。(笑)

話の大筋としては広島県福山市鞆という場所で、合同結婚式をすることで有名な信仰宗教の団体が街に広がっていた。
そしてその団体は世界各地で犯罪を犯しているが、いつも捕まえることが出来ないでいた。
その異国の教祖の犯罪のしっぽを掴んで、捕まえるというのが、御手洗潔の目的である。

と同時に、歴史ミステリー要素もあり、幕末の黒船来航のおりに、万が一戦争になった時にの対抗策として、星籠という兵器らしきものがあったのではないか、それは何か、果たしてあるのか?という謎解きもある。
その辺は、歴史ロマン、そんな話があったら面白いという、島田荘司お得意の話かも。

その他の登場人物についてもエピソードがけっこう丁寧に書かれているがゆえに、そこそこの長編です。
まあ、そこそこ面白いかと思いますが、もう少し短くても良いような。。。
それから、今回の登場人物の女性の描き方が、自己中な女性を持ってきているように感じたのは、気のせいか。(笑)

映画も、ケーブルテレビでやるようなことがあったら、観てみようと思う。

2017年(1)荒廃のカルテ少年鑑別番号1589(横川和夫)

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

荒廃のカルテ [ 横川和夫 ]
価格:1944円(税込、送料無料) (2017/1/9時点)




今年最初の読書といっても、年末からの年またぎでやっと読了。
年々、読書量が減っている。(;'∀')

追跡ルポルタージュ 少年たちの未来といシリーズの1。
このシリーズは、復刻版らしく、最初に出版されたのは、1985年7月で、書籍になる前は新聞に連載されていたので、書かれたのは、1984年ぐらいだろうか。
今から33年前に書かれていたことになる。

1983年に発生した「女子大生暴行殺人事件」の少年犯の生い立ちと起こした事件について書かれたルポルタージュである。
少年19歳の生い立ちは、母親が刑務所にいる時に生まれ、すぐに乳児院に行き、親元に戻ることなく養護施設でずっと育てられる。
今から30年前の乳児院、養護施設は、今よりもっと人手も足りず、手をかけて育てられることがなかったようだ。
おまけに、体罰や施設の子供同士のなかでの年長の子どもから年少の子どもに対する、いじめや性的虐待が横行していて、ひどい状態であったようである。

本書の少年犯が事件を起こす背景には、少年の生育歴、特に幼少期に親、保護者(誰でもいいのだが)安心して頼れる者の庇護にいて、愛情をかけられることなく育ったことが大きく関係していると分析している。

その少年の犯罪を起こす過程や、成育歴や、施設の運営の在り方など、丁寧に取材をして書かれている本書は、社会に大きな影響を与えたようである。

子どもの育て方や、施設の在り方がこの30年で大きく変わったのは、この本によるのかもしれないと思った。
古い本ではあるが、福祉や教育の歴史を学ぶには良い本かと思う。

2016年(11)サバイバー(小山紗都子)

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

送料無料/サバイバー/小山紗都子
価格:1728円(税込、送料無料) (2016/12/26時点)



著者の紹介に生母による虐待、性的被害、親の離婚、いじめ、障害者の妹、未亡人、交通事故、リストラなど、多数の人生経験を持つ、自称「社会派主婦作家」とある。

自伝的な小説かと思っていたら、どっちかというと、大学生の青春(?)というか、成長物語のような感じがした。
主人公は女子大生で、バイト先で知り合った年上の薬学部の学生と付き合うようになる。
急速な付き合いではなく、段々と深く付き合うようになり、身体の関係もディープになったある日、幼稚園時代近所の男子中学生に性的被害を受けていたことを突然思い出す。
その中学生は、幼稚園の友達を殺した犯人であり、その事件をきっかけに、主人公一家が引っ越しをし、父は転職をすることにもなっていた。

確かに、サバイバーというのは、ひどい虐待を受けながらも、生き延びた者を指す。
主人公は、一度の性的被害の記憶を無くしていたのは、記憶に封印したとも言えるが、サバイバーと言えるのかは、ちょっと疑問に思う。

ただ、幼児の性的被害者の目線で描く小説は多くあれど、切り口は新しいと思う。
231Pで文字数はそれほど多くなく、文体もとても読みやすいので、2、3時間ぐらいで読め、小説という形を取ってはいるが、性的虐待や性的被害者について関心のある人は、参考になる部分もあるように思う。

2016(10)おそろし・三島屋変調百物語事始(宮部みゆき)

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

おそろし [ 宮部みゆき ]
価格:777円(税込、送料無料) (2016/12/25時点)




文庫本、そこそこの小さい文字で481P、けっこう長い物語です。
江戸時代の江戸の袋物屋(そこそこの大きさのお店)で親戚から預かった年頃の娘おちかが主人公。
おちかの実家は川崎の宿屋であったが、おちかが原因で起きた殺人事件から逃れるように、江戸にやってきたのであったが、その事件の責任を深く感じ自分を許せずにいた。

ある日、叔父の代わりにお客様の相手をしていたら、そのお客・松田家の主人とその兄にまつわる因縁話をおちかに打ち明けられ、松田家の主人は、おちかに話すことで、心の荷を下ろして、安らかにあの世に旅立つことが出来た。
そのことをきっかけに、叔父が考えたのが、百物語をおちかが聞いて、それを叔父に話して聞かせるということ。
世の中には、恐ろしいこと、悲惨なことがたくさんある、おちかだけが悲惨な目にあっているのではないということを知ることで、おちかの心の重荷が解けるのではないかと、叔父は考えたのではないだろうか。

松田家の主人と殺人を犯してしまい島流しになり、帰って来た兄に冷たくしてしまったがゆえに兄が自殺してしまった、松田家の主人の曼珠沙華の話の後に、そこで、おちかは5日に一度、いろいろな人から、不思議な話、悲惨な因縁話を聞くこととなる。

武家屋敷に取り込まれてしまった家族と生き残った娘にまつわる不思議な話。
おちか自身が巻き込まれ、巻き起こした殺人事件の話。
仕立物屋の娘の家族の悲惨な魔鏡にまつわる因縁話。

そして、武家屋敷にまつわる話では、屋敷は燃えてしまったが、生き残った娘の中に魔物はまだ残っていて話は終わっておらず、おちかは、武家屋敷に巣くっていた魔物に呼ばれる。

それを退治する役回りがおちかである。
そして、今まで出てきた、多くのあの世に行った人たちをおちかが話を聞くことによって、救われおちかの力となって、魔物というか、この世に未練を残して、あの世に行けずに迷っているものを退治=救うのである。

悲惨な事件がたくさん出てくるが、なんだか悲しい。
そして、悲しい思いを知る、おちかゆえに成仏出来ない魂を救えるのかもしれない。
おちかの叔母を気性も真っ直ぐ、生きる道も真っ直ぐ。後ろ暗いところがない人間として、おちかや叔父と対比させている。
おちかの心にも、真っ直ぐでない何かがある、いや、大抵の人間には心に多かれ少なかれ、闇を持つ。
その闇を持つ者だけが、闇に落ちてしまう人間の心を救うことが出来るのかもしれない。

百物語事始ということは、百まで続くのでしょうね。
ここではまだ5つ。


2016年(9)走れ!児童相談所(安道 理 あんどう さとし)

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

走れ!児童相談所
価格:1944円(税込、送料無料) (2016/12/9時点)



サブタイトルが、「発達障害、児童虐待、非行と向き合う、新人所員の成長物語」となっているように、県の事務職員であった主人公(30代前半ぐらいか、独身男性)が突然の人事異動で、児童相談所の現場職に配属になる。
主人公は、普通の家庭に育ち、特に児童福祉の分野にもまったくの素人なので、配属されたその時から、児童福祉について、一から学んでいく。
その様子は、ほとんど知識の無い読者にもわかりやすい。
(著者の安道 理はペンネームで、自身の経歴が主人公と同じなので、自分の経験を元に書かれているようである。)

そんなまったくの素人の主人公の目線が、読者の気持ちを代弁してくれているので、とてもわかりやすい。
ドキュメントやノンフィクションという形ではなく、小説という形式で描いているのは、むしろ、児童相談所に働いているいろいろな職種の職員さんが、児童相談所に訪れる親子に対して、深い深い思いやりと、親子をよりよい関係になるようにサポートするんだとの強い思いをわかりやすく伝えてくれていると思う。

事例としては、
言葉の発達の遅れが見られる幼稚園児の親子。
触法少年の中学生の少年と両親の面談。
ゴミ溜めゴキブリだらけの家でネグレクト状態の母子の生活の立て直し。
ADHDであるためストレスから虐待されてしまう、小学1年の少年と母親。
そして、あと数日発見が遅れたら、死んでしまうというほどの、虐待を受けて、衰弱しきった小学6年生の少年と実母と継父。

親へのサポートが上手くいき、親子関係が修復出来る場合もあるのを見ると、周囲のサポートや声かけの大事さを学ぶことができた。
が一方、どう対応してもどうにもならない親もいる。
極限までの虐待を受けた子供の親への信頼は戻らないのである。

特に印象的だったが、初めの方で、先輩の臨床心理士が主人公になぜ虐待が増えているのかを説明する部分で、
人間の脳はイチゴ大福のように3層になっていて、性行動という「本能」が1層目にあり、次に喜怒哀楽の「感情」が2層目にあり、更に外側の3層目に人間を人間たらしめている、「理性」がある。
その理性が欠如する人間が多くなっているという。

そして、その理性を作るのは簡単で、3歳までに絵本を読み聞かせるとか昔話を聞かせることで作ることができる。
要するに、言葉を理解し、言葉からいろいろなイメージを膨らませる力を育てることで、三層目の脳=理性は形成され成長していくというのである。

人間は唯一言葉を持つ存在で、言葉によって複雑な社会を維持している。
言葉から様々な情景をイメージできたり、感情の機微を感じとれるようになるには、読み聞かせが最も効率的な方法である。

ところが、最近はテレビやDVD、ゲームなど映像による視覚的刺激をいきなり脳に送る媒体が増えすぎて、言葉から何かをイメージする力が極端に落ちてしまい、三層目の脳が育たない。

また、親も忙しく、三世代同居が多い時代なら、親の代わりに祖父母が昔話を聞かせたり、未熟な親が子を叩けば、親を叱る祖父母がそばにいたが、それもなく、更には地域社会も崩壊して、隣の人さえどんな人か知らない世の中になってしまった。

これからも、核家族化は止められないだろうが、地域社会を再生する必要がある。
理性を欠如した未熟な親が自分たちだけで子育てをするのではなく、地域の交流が増えることで、理性的な子育てに触れる機会を増やすことが大事である。

まさしく、地域力を増やすことが、理性ある人間を育て、遠回りではあるが、虐待を減らす一歩となるのではないかと思った。

読みやすかったが、なかなか、考え深く、面白く、そして泣けたりする良い本でした。
ドラマ化するのにも、良いかもしれない。
NHKあたりに、ドラマにしてくださいと投書しようか。
映画化もいいかもね。(笑)

2016年(8)ホテルローヤル(桜木紫乃)

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

ホテルローヤル [ 桜木紫乃 ]
価格:540円(税込、送料無料) (2016/12/8時点)




【内容情報】(「BOOK」データベースより)
北国の湿原を背にするラブホテル。生活に諦念や倦怠を感じる男と女は“非日常”を求めてその扉を開くー。恋人から投稿ヌード写真の撮影に誘われた女性事務員。貧乏寺の維持のために檀家たちと肌を重ねる住職の妻。アダルト玩具会社の社員とホテル経営者の娘。ささやかな昴揚の後、彼らは安らぎと寂しさを手に、部屋を出て行く。人生の一瞬の煌めきを鮮やかに描く全7編。第149回直木賞受賞作。

【著者情報】(「BOOK」データベースより)
桜木紫乃(サクラギシノ)
1965年北海道生まれ。2002年「雪虫」で第82回オール讀物新人賞を受賞。07年同作を収録した単行本『氷平線』でデビュー。13年『ラブレス』で第19回島清恋愛文学賞、同年『ホテルローヤル』で第149回直木賞をそれぞれ受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

ラブホテルにまつわるお話というので、かなりエロチックな場面があるのかと思ってましたが、全然とは言わないけど、いわゆる濡れ場的な描写はほとんど無かったです。
そのかわり、性を通して、生を感じました。

7つの短編で本筋は別個の物語ですが、ホテルローヤルが背景であったり、短編の登場人物が少しだけリンクしていたりして、ホテルローヤルの周りで起きる物語です。

また、最初のお話から後にいくにしたがって、時代がさかのぼっていきます。
なので、前半に出てくるホテルを切り盛りしている娘さんが後になって出てくるお話では高校生であったり、仲の悪くなってしまった夫婦の過去、夫婦の出会いと結婚の話が後から出てきたりします。

バッドエンドを知りながら、そのルーツを見ると、始まりは決して仲が悪かったのでは無いのになぁ、時の流れとなぜか上手くいかなくなってしまう流れを灌漑深く思ったりしました。

ホテルの従業員の60歳の女性が、幼少期からの貧しい生活の中、ひたすら真面目に寡黙に働き、どんなつらい状況になっても、その状況を受け入れ、ただただ、ひたすら真面目に寡黙に働く。
その柳のような強さの生き方に、果たして、私には無理かもと思いつつも、感銘さえ感じました。
今では絶滅してそうですが、昔の人はそういった人が多かったのかな。

狭いアパートに家族と住むがゆえに、夫婦生活もままならない中年夫婦が、法事のお金が急に浮いたので、そのお金でホテルに休憩に入る話では、日々の生活とは違った世界の楽しさ、夫婦だけの時間を持った楽しさに目覚め、パートに出たお金で、夫をまたホテルに誘おうと決意する主婦に、明るい未来を感じたりしました。

若い世代、独身女性、中年夫婦、初老の夫婦、いろいろな世代の人が出てくるので、読む人によって、どれかの登場人物に感情移入できるのではないかと思います。

左サイドMenu

最近の記事

カテゴリー

ブログ内検索

過去ログ +

2017年 03月 【1件】
2017年 02月 【1件】
2017年 01月 【4件】
2016年 12月 【4件】
2016年 11月 【2件】
2016年 09月 【1件】
2016年 07月 【2件】
2016年 04月 【2件】
2015年 08月 【1件】
2015年 07月 【4件】
2015年 06月 【4件】
2015年 05月 【4件】
2015年 04月 【1件】
2015年 03月 【2件】
2015年 02月 【1件】
2015年 01月 【1件】
2014年 11月 【1件】
2014年 10月 【1件】
2014年 09月 【3件】
2014年 05月 【2件】
2014年 04月 【2件】
2014年 03月 【1件】
2014年 02月 【1件】
2014年 01月 【2件】
2013年 12月 【2件】
2013年 11月 【1件】
2013年 09月 【1件】
2013年 08月 【5件】
2013年 07月 【1件】
2013年 05月 【3件】
2013年 04月 【2件】
2013年 03月 【2件】
2013年 02月 【2件】
2013年 01月 【2件】
2012年 12月 【2件】
2012年 11月 【1件】
2012年 10月 【2件】
2012年 09月 【2件】
2012年 08月 【2件】
2012年 07月 【1件】
2012年 06月 【5件】
2012年 05月 【3件】
2012年 04月 【4件】
2012年 03月 【1件】
2012年 02月 【4件】
2012年 01月 【2件】
2011年 10月 【1件】
2011年 09月 【1件】
2011年 08月 【1件】
2011年 05月 【6件】
2011年 04月 【3件】
2011年 03月 【1件】
2011年 02月 【12件】
2011年 01月 【5件】
2010年 12月 【4件】
2010年 11月 【1件】
2010年 10月 【1件】
2010年 09月 【8件】
2010年 08月 【3件】
2010年 07月 【3件】
2010年 06月 【2件】
2010年 05月 【2件】
2010年 04月 【7件】
2010年 03月 【5件】
2010年 02月 【5件】
2010年 01月 【10件】
2009年 11月 【3件】
2009年 10月 【2件】
2009年 09月 【2件】
2009年 08月 【7件】
2009年 07月 【10件】
2009年 06月 【8件】
2009年 05月 【2件】
2009年 04月 【2件】
2009年 03月 【2件】
2009年 02月 【3件】
2009年 01月 【10件】
2008年 12月 【4件】
2008年 11月 【2件】
2008年 10月 【3件】
2008年 09月 【3件】
2008年 08月 【1件】
2008年 07月 【4件】
2008年 06月 【2件】
2008年 05月 【8件】
2008年 04月 【5件】
2008年 03月 【1件】
2008年 02月 【1件】
2008年 01月 【2件】
2007年 12月 【3件】
2007年 11月 【1件】
2007年 09月 【8件】
2007年 08月 【7件】
2007年 07月 【14件】
2007年 06月 【3件】
2007年 05月 【1件】
2007年 04月 【6件】
2007年 03月 【6件】
2007年 01月 【2件】
2006年 12月 【9件】
2006年 11月 【11件】
2006年 10月 【11件】
2006年 09月 【3件】
2006年 08月 【5件】
2006年 07月 【10件】
2006年 06月 【5件】
2006年 05月 【8件】
2006年 04月 【6件】
2006年 03月 【7件】
2006年 02月 【6件】
2006年 01月 【9件】
2005年 12月 【3件】
2005年 11月 【6件】
2005年 10月 【9件】
2005年 09月 【8件】
2005年 08月 【9件】
2005年 07月 【13件】
2005年 06月 【4件】
2005年 05月 【5件】
2005年 04月 【9件】
2005年 03月 【10件】

右サイドメニュー

プロフィール

海辺野まき貝

Author:海辺野まき貝
手作り、縫い物、編み物など手芸が好きで、読書も趣味の専業主婦です。
他に手作りサイト
 「bubble cotton how to make」 
とブログ 「bubble cotton」 
もやってます。

こんなのいかが?

ブログの記事本文内に載せてある画像は、楽天にリンクしています。 参考にご利用ください。